Q : 製造業の世界共通課題は何ですか? その解決方法は?
A : 私は、2006年11月、サプライチェーンマネージメント(SCM)に関するランキングでは世界1位と言われている米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)のビジネススクールSloan School of ManagementのSCM等の講義を受講してきました。その教授陣が異口同音に言う「製造に関する世界共通の課題」があります。それは以下の2点です。
1. 需要と供給をいかにバランスさせるか
2. 不確実性にいかに対処するか
お客様のニーズは多様化し、その結果として製品数は増加の一途です。色、サイズなどの仕様のバリエーションも含めると数百万種類の製品が工場を流れている状態も珍しくはありません。お客様の納期要求はさらに厳しくなり、かつ、オーダの変更が頻繁に起こります。このように年々厳しくなる外部環境において、需要と供給をいかにバランスさせるかがより大きな問題となってきています。しかも、在庫を最小限に抑えなければなりません。製品のモデルチェンジは早く、ライフサイクルが短いため、在庫は死蔵品となりやすく、死蔵品になると価値はゼロに近くなります。
外部環境の変化だけでなく、内部環境も変化します。工場内では機械の故障、作業者の病欠、不良品の発生など、予測しがたい不確実性があり、ジャストインタイムな生産を妨害します。
MITではこの2つの課題に対する解決策は、(1)見える化、(2)リードタイム短縮、の2つであると教えています。
見える化とは、工場の中の現在の状態を見えるようにすることです。工場の中を多種多様な製品の膨大な数のオーダが流れているとき、「製品や部品の在庫はどこにいくつあるか」「各オーダはどの工程にあるか」「納期遅れしそうなオーダはどれか」などが見えなくなります。これがコンピュータの画面上で見えるようになれば、需要・供給のバランスをとりやすくなるし、突発事故のような不確実性にも的確に対処できます。
リードタイム短縮の効果は、リードタイムが究極的にゼロに近づいた状態を想像するとよくわかります。リードタイムがゼロであれば、納期直前に購買・生産を開始すればよく、在庫=0、納期遵守率=100%になります。実際には、リードタイムがゼロになることはありません。しかし、リードタイムが短ければ短いほど在庫=0、納期遵守率=100%の状態に近づくことは確かです。MITでは究極的にリードタイムがゼロに近づいた状態がJIT(Just in Time)であると教えていました。
MITでの教義および「利益増大の好循環マップ」から、第一に取り組むべき問題は、見える化、リードタイム短縮であるということが分かります。