●本書のねらい

グローバル競争の中で製造業が勝ち残り、利益を増大していくのが難しい状況が続いています。このような環境下で、企業の利益を増大するにはどうしたら良いか。この問題に対する答えを、過去14年以上にわたる生産計画スケジューラAsprova(アスプローバ)の研究開発とコンサルテーションの経験からまとめました。

1990年代初頭、生産スケジュールを作成するのに人間が非常に苦労していることを目の当たりにして、これをコンピュータで手助けしたら、人間の生産スケジューラが非常に楽になるだろうという発想で生産計画スケジューラAsprovaの開発が始まりました。そして、生産計画スケジューラAsprovaが多くの製造業に導入されるにつれ、生産計画スケジューラは企業に利益をもたらす重要なツールになることがわかってきました。

2001年、私は生産計画スケジューラAsprovaをゼロから設計しなおしました。そのときに、「製造業の利益増大」を一つの設計目標にしました。そして、本書に登場する「利益増大の好循環マップ」ができました。製造業利益増大の第一ステップは「見える化」です。BOM(部品表)、生産スケジュール、設備負荷、在庫などを見えるようにすることです。次に、「リードタイム短縮」です。

2006年11月、サプライチェーンマネージメントに関して世界No1とされるMIT(マサチューセッツ工科大学)のビジネススクールで学ぶために私は米国ボストンに赴きました。その講義の中で、MIT教授陣が異口同音に言っていたことも、「見える化」と「リードタイム短縮」の重要性でした。 2008年現在も、私どもは企業利益増大を目標に生産計画スケジューラAsprovaの開発を続けています。それらの最新情報を本書にてご紹介いたします。

●生産計画スケジューラと生産スケジューラ

 本書では、「生産計画スケジューラ」という用語を頻繁に用いています。これは、Advanced Planning and Scheduling Systemに対する私の日本語訳です。日本では、単に、生産スケジューラと呼ぶことが多いですが、本書では、中期・長期のスケジュール、受注・購買のスケジュールを含むスケジューリングシステムという意味で、生産計画スケジューラという用語を用いています。

●アスプローバ社について

 1994年に日本初の生産計画スケジューラの研究・開発会社として設立され、同社の生産計画スケジューラAsprovaは、全世界1200サイト以上に導入されています。