今回は、生産ラインの見える化の具体的な事例を紹介したいと思います。
 当社ユーザーのある事務機メーカーの工場では、無線バーコードリーダによる生産進捗の管理を実現しています。生産ラインの見える化の成功のキーポイントは、自動倉庫とのシステムリンクです。同工場では前工程の生産終了情報がコンピュータに入力されないと、キット部品の払い出しができない仕組みにしてあります。
 また、この工場では全サプライヤーの部品の品質と納期遵守率をホームページ上で公開しています。公開された情報は部品メーカーにとっては、その他の取引先とのビジネスにも影響を及ぼすものですので、各社とも自社の順位を上げようと真剣になります。
 その結果、この完成品メーカーでは、製品および部品の納期遵守率が100%守られるようになりました。これまでの低賃金雇用を軸とする中国工場での製造現場では、インセンティブが情報精度をあげる手段のひとつとして使われてきました。しかし、賃金も上がった最近の中国工場では信賞必罰、強制的なペナルティが効力を発揮するようになってきています。
 とはいえやはり他国である中国でのビジネスです。飴と鞭の戦略で、従業員には日本人の考え方に慣れてもらうために会社主催の日本語講座や日本の工場への研修などのメニューを用意しています。
 さらに、サプライヤーに関しては、懇親会を設けるとともに定期的な勉強会を開くなどして、お互いのGive&Takeを実現しているようにもみえます。
 大切なのはこれらの活動を継続して行っていることで、他社であってもグループ内企業のような親密な関係(特に中国では人間関係が重要)が成り立っている会社も存在します。
 このほか、中国工場について挙げられる課題が製造原価の見える化です。当社ユーザーでもあり世界的な中国メーカーのある会社は、ERPによる原価情報の精度向上のために生産スケジューラ「Asprova」を導入しました。
 「Asprova」は製造現場の実績情報をより正確なものにし、各装置の稼働率や能力も見える化します。それらの製造諸元を利用して、この中国メーカーは正確な製造原価を把握するとともに、「AsprovaKPI」機能を利用して金額的に最適な製造計画をたてることにも成果を上げています。
 次回は、先端の中国企業でのITシステムをご紹介させていただきたいと考えています。

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