Q: 生産計画スケジューラ導入成功のポイントは何ですか?

A: 本書の巻頭に導入によって大きな成果をおさめた事例をいくつかご紹介しました。しかし、過去の事例では導入が成功しない、または、導入中に問題が発生した例もあります。そのような例を参考に、生産計画スケジューラ導入成功のポイントをまとめると以下のようになります。

 




 

成功しない事例

成功のポイント

1

高すぎる目標設定

理想的な生産スケジュールを狙って、すべての生産の制約条件を設定しようと努力しました。しかし、非常に苦労した割には実稼動まで時間がかかり、導入スケジュールが長引きました。生産計画スケジューラの導入目的は会社の利益増大です。あまりに枝葉末節にこだわると労多くして功少なしです。

現実と理想との中間で目標設定する

理想像を描くことは良いことです。但し、理想像をそのまま目標にしてしまうと多くの場合うまくいきません。目標設定は現状と理想の中間の程よいところで設定します。そして、一度設定した目標をプロジェクト途中で追加したり、変更したりすると導入プロジェクトの混乱の元になりますので、最初にしっかりした目標設定をして、途中で変更しないようにします。また、複雑なBOM設定を多用すると、BOMメンテナンスがストップし、生産計画スケジューラの計算結果が信用できなくなり、次第に使われなくなるケースもありますので、BOMの設定は複雑にしすぎないことも重要です。

2

プロトタイプを作らないで導入決定

会社が生産計画スケジューラの必要性を認めて導入を即決しました。購入してからプロトタイプを作りました。その結果、新たな要望が多くでてきて、どのように解決するかを検討しました。その結果、元々の導入スケジュール、導入予算が大幅に狂ってしまいました。

契約前に充分に検討する

生産計画スケジューラの導入を正式決定する前に、必ずプロトタイプを作ります。そして、プロトタイプができたら、関係者全員を集めて、プロトタイプの説明会・デモンストレーションします。問題点を洗い出し、生産計画スケジューラの標準機能でできること、できないことを明確にしてください。

3

カスタマイズ開発のしすぎ

自社の特殊な生産工程やスケジュールのしかたに合うように、新しい生産スケジューリングロジックをプラグイン開発でカスタマイズしました。お客様の会社の優秀なエンジニアが開発を担当し、無事、本稼動を開始しました。当初はこの会社にぴったり合ったシステムでした。しかし、会社が生産する製品や生産工程は日々変化します。また優秀な人材は異動しがちです。このエンジニアが異動したあと、この複雑な生産スケジューリングロジックのプログラムを管理できる人がいなくなりまた。結局、変更要求が出てきても変更できない状態になり、次第に生産計画スケジューラは使われなくなりました。

カスタマイズ開発は極力少なくする

カスタマイズ開発は極力少なくしてください。問題点の解決方法の検討順序は以下のとおりです。

  1. 生産計画スケジューラの標準機能で解決する

  2. 運用で解決する

  3. 外部プログラムを作成して解決する (外部システムインターフェースも含む)

  4. プラグインによりカスタマイズ開発する

4

処理スピードが遅い生産スケジューラ

弊社に連絡があり生産スケジューラAsprovaのデモをしてくれとの依頼がありました。しかし、この会社はあるSI(システムインテグレータ)に依頼して、その工場にぴったりの生産スケジューラを開発し、稼動をはじめたばかりと言います。その直後なぜ、弊社を呼んだのかと聞くと、開発したばかりの生産スケジューラが実データで動かしてみると、生産スケジュール処理時間が5時間以上かかる。これでは迅速な納期回答・納期対応ができず使用不能と判断したとのことです。この会社は多額な費用をかけた自社向けの生産スケジューラをあきらめ、Asprovaを導入しました。

実データでのリスケジュール処理時間を把握する

実稼動時のデータ量およびパラメータ設定におけるリスケジュール(スケジュールの立て直し)処理時間を、プロトタイプ作成時につかんでおきます。複雑な設定をすると思った以上に処理時間がかかることもあります。

5

コスト抑えるために自力で立ち上げ

コストを抑えるために生産計画スケジューラパッケージを購入し、あとは自力で立上げることにしました。しかし、ITや生産管理の知識はいくらかあるものの、生産計画スケジューラの立上げは初めての経験なのでなかなか実稼動に至りませんでした。

導入コンサルテーションは極力受ける

生産計画スケジューラの導入経験がない場合は、費用がかかっても導入コンサルテーションを受けてください。経験豊富なコンサルタントから導入コンサルテーションを受けることにより、生産計画スケジューラ導入の費用対効果を最大限にできます。

6

現場が従ってくれない

生産計画スケジューラは稼動開始し、作業指示も生産計画スケジューラから出力することができるようになりました。しかし、現場の作業者の一部がその作業指示に従ってくれないために、活用されているとはいえない状況です。

新しい管理のしかたを現場に徹底させる

生産計画スケジューラの導入は業務改革を伴います。製造指示の発行方法や製造実績の収集方法などが変わります。今までの業務のやり方に固執する人たちもいます。業務改革は全員が理解して、全員が実施しなければなりません。運用テストを開始する前に、新しい運用方法の意味や実施方法について説明会を開きます。業務改革を徹底するよう、社長・工場長から正式な業務命令をすることが必要です。異動などで担当者が変わる場合は、生産計画スケジューラの運用に支障がないように、新しい担当者に生産計画スケジューラの講習会を受けさせるなど、運用の引継ぎをしてください。

7

プロジェクト体制、人員が不十分

BOMの整備に担当者が1名任命されました。しかし、この担当者は日頃の生産管理の職務をしながらの兼任でしたので、数ヶ月たってもBOMの整備が完了できませんでした。結局、プロジェクト体制を立て直すことになりました。

プロジェクト体制をつくる

プロジェクトは、通常プロジェクト責任者1名、 生産管理担当者1名以上、システム管理者1名以上の計3名以上のプロジェクトチーム になります。せっかく計画ができてもそれを現場が使ってくれないこともあります。プロジェクト責任者に社長や工場長になっていただき、関係者全員の協力が得られれば、難しいプロジェクトではありません。むしろ、簡単なプロジェクトです。

 

 

 

  

  

 

関連項目 :BOM ( Bill of Material : 部品表)の見える化

関連項目 :< 生産計画コンサルティング コラム6 >

関連項目 :生産計画スケジューラの導入手順

関連項目 :プロトタイプ作成方法

関連項目 :プロトタイプ自動作成サービス「プロト君」

関連項目 :生産計画スケジューラのカスタマイズ

関連項目 :パラメータ設定だけで導入するのが基本

関連項目 :カスタマイズの最強の武器「式」

関連項目 :プロパティの追加

関連項目 :計算結果を表示するプロパティ(仮想プロパティ)の追加

関連項目 :パラメトリックBOM

関連項目 :外部システムインターフェース

関連項目 :追加プログラムの開発

関連項目 :プラグインの開発